不動産会社で日常を過ごしている方にとってはごく当たり前の事象であっても、
地主の皆様や他業種にお勤めの方にとっては新鮮に受け取れる事例もあります。
ここでは、以前にこんな事がありましたという事例をご紹介していきます。

【高圧線】
無電柱化を進めている電線の無い街は、空中に開放感が有って非常に良いですが、
実際にはそういう街は多くはありません。

電線を目で追って、近くに鉄塔が有ると電磁波の影響等々、何となく不安になりますね。
今まで鉄塔の数は気にした事は無かったのですが、日本全国で約25万基もあるそうです。
それでも、市街地で鉄塔が近くに有ると、状況によっては重要事項説明書や売買契約書にも
容認事項として記載するケースが出てまいります。価格要因に影響を与えますからね。

今回の事例では、
かなり大きな鉄塔が近くに見えて、高圧線が当該地の上空を通過しています。

一言に高圧線と言っても、実は電圧によってかなり状況が変わります。
ちょっとした鉄塔からの電線の場合は、6600ボルト程度の高圧線が一般的なようです。

現地調査時には違和感を探します。
今回の鉄塔ははかなり大きく見えました。東京23区内なのにです。
周辺は中高層マンションが有りますが、高圧線下では3階建または地盤面を掘って4階建。

いろいろな制約が有りそうですね。

電力会社へのヒアリングでは、大きな制約は高さ制限くらいでした。
・特別高圧線といって、電圧は66,000ボルト。
・電圧線の高さは15m
建築時にクレーン車が電線を引っ掛けないように電圧線下3mは建築禁止
つまり、建築高さは地盤面から12mまで

しかし、賃貸マンションを建築するにしても一般的には嫌悪施設と考えられますので、
入居希望者から見ればマイナス要因となります。購入者も収益に制約がありそうです。

この案件は、土地の借地人さんが購入者でした。
・地主さんのニーズは、次世代のために当該貸地を換金したい。etc
・借地人さんのニーズは、できる事なら自身の所有権としたい。etc

汲むべき事情としては、
・敷地の東西では大きな高低差が有り、擁壁の処理は過去に借地人さんが行っていた。
・土圧によって既に擁壁に傷みが見られ、将来的にやり替えが必要になる可能性有り。
・(ここには書けませんが)固有の事情

借地人さんにとって、
(加算項目)線下補償料《年間、坪当たり7,500円くらい》、地代・更新料が無くなる事
(減算項目)土地固定資産税が発生する事《地目上は農地扱いですが、元々宅地並み課税》

これらを検証し、借地人さんにとっての損益分岐年数を提示しました。
地主さんも借地人さんも納得されて、農地転用《農地法第五条》もして取引が完了しました。

底借地の取引は利益相反はするため、お互い100点満点の満足はありません。
今回のケースでも、お互い80点くらいの満足度でした。
当初は立場の違いによる誤解もありましたが、それも解消され、取引後はホッとした笑顔でした。

そうなんです。
地主さんと借地人さんとでは、お互いの見ている角度が異なりますので、間に入ると少なからず
何らかの誤解が生じているケースがほとんどなのです。
そこが解決されるだけでも意義のある出来事なのです。

また、
所有権の取引の場合は『売却価格』が満足度の要素として非常に高いものになりますが、
底借地の取引の場合は『売却価格』だけが最優先事項ではありません。
ニーズを把握できれば、地主さんと借地人さんとの双方から合格点を頂ける時は良く有るのです。

近隣の鉄塔ですが、実物は写真で見るより迫力があります。何となく怪獣のような出で立ち。
※写真の駐車場は近隣であり、当該地ではありません。